鍼灸師のお仕事 01手太陰肺経 霊枢経脈篇

01手太陰肺経 配布

【概説】

太陰経 多血少気

・肺は気を主り、気を全身に巡らしている。

肺の主な働きは気を全身に巡らすことである。この巡らす働きをしているのが肺気である。肺気はほぼ衛気と同じと考えてよく、心や肝に蔵されている血や腎に蔵されている津液を巡らす助けをしている。呼吸されるたびに気が巡らされている。呼吸の原動力となっているのが宗気である。これは脾で造られた気と呼吸によって取り込まれた天空の気が合したもので、循環せずに胸中に存在している。

宗気→脾で作られた気+呼吸によって得られた天空の気

胸中=胸腔のこと

・肺は皮毛を主る。

皮毛とは表皮とうぶ毛のことである。肺気は皮毛に衛気を巡らし、温度に応じて毛穴を開いたり閉じたりして体温の調節をしている。このことを理の開闔という。理とは気の出入りする穴のことで、表皮だけではなく臓腑にも存在するが、表皮においては毛穴のことである。衛気は理を閉じることによって外邪の侵入を防いでいる。肺気はまた衛気を巡らすと同時に津液も巡らしており、皮毛に潤いを与えている。そのため、肺の働きが衰えると皮膚に潤いがなくなりかさつく。

 

肺の色体表                                                             

五臓 五腑 五精 五主 五官 五華 五志 五味 五悪 五変
大腸 皮毛 憂悲 燥寒

【原文】

肺手太陰之脈、起于中焦、下絡大腸、還循胃口、上膈属肺。従肺

系横出腋下、下循臑内、行少陰心主之前、下肘中、循臂内上骨下廉、

入寸口、上魚、循魚際、出大指之端。其支者、従腕後直出次指内廉、

出其端。

是動則病肺脹満、膨膨而喘咳、缺盆中痛、甚則交両手而暓。此為臂厥。是主肺所生病者、咳、上気喘渇、煩心、胸満、臑臂内前廉痛厥、掌中熱。気盛有余、則肩背痛、風寒、汗出中風、小便数而欠。気虚則肩背痛寒、少気不足以息、溺色変。為此諸病、盛則写之、虚則

補之、熱則疾之、寒則留之、陥下則灸之、不盛不虚、以経取之。盛者寸口大三倍千人迎、虚者則寸口反小于人迎也。

【注釈】

中焦-中脘の部位を指す。

絡う-連絡の意味。本経と表裏をなしている蔵府を纏うことを全て「絡う」という。

還る-経脈が循行してまた戻って来ることを指す。

胃ロ-胃の上口の賁門と下口の幽門を指す。

循る-沿うこと。

属す-隷属の意味。経脈がその本経の蔵府に連なることを全て「属す」という。

肺系-肺と連続している気管、喉嚨等の組織。

臑-腋に相対する上腕内側。

廉-辺縁の意味。

魚-手の親指の本節の後の掌側で肌肉の隆起しているところ。

魚際-「魚」の辺縁を「魚際」と言う。

是れ動く-「動」とは変動である。外因が経脈に影響して発生する疾病を「是動病」という。張志聡の説「いったい『是動』とは、病が体外から起こるものをいう」。

暓す-物を見ると曖昧模糊としてはっきりせず、精神が混乱していること。

臂厥-病名。背部の経気が厥逆し、両手が胸の前で交叉し、物を見るとはっきりしない。

生ずる所の病-本経と相連続している蔵府ならびに影響している経脈に生ずる疾病。

渇-『甲乙経』『脈経』では共に「喝」に作る。張介賓の説「渇は喝に作るべきだ。声が粗く急いていること」。

小便数にして欠す-小便が䪼 繁で量が少ないこと。

【訳注】

(一)「上骨下廉」の訳としてはどうか。前腕の高骨の下縁(孔最、列欠の線上)を指す。

(二)四倍になる。

【現代語訳】

手の太陰肺経は、

1-1中脘部より起こり、下に向かって大腸を絡い、戻って胃の下口から上口を循り、上って横隔膜を貫き、肺蔵に属する。再び気管、喉より横に腋下に走り、上腕の内側に循り下降し、手の少陰経と手の厥陰経の前面に走り、直ちに下って肘の中に出て、その後に前腕の内側を循り、掌後の高骨の下縁を経て、寸口の動脈のところに入り、魚に上り、手の魚の辺縁に循り、拇指の尖端に出る。

1-2其の支脈は、手腕の後より直ちに示指の内側の尖端に走り、手の陽明大腸経と相い接する。

外邪が本経を侵犯して生ずる病証は、肺部が膨膨として脹満し、咳嗽して呼吸があらく、缺盆部が疼痛し、重くなると両手を交叉して胸部をおさえるようになり、視るものが曖昧模糊としてはっきりしなくなる。此れを臂厥病と言う。

2-1本経が主っている肺蔵によって生ずる病変は、咳嗽し、呼吸切迫し、喘して声が粗急し、心中煩乱し、胸部が満悶し、臑臂部の内側の前のへりが疼痛厥冷し、あるいは掌心が発熱するなどである。

2-3本経の気が盛んで有余で

あると、肩背が疼痛し、風寒を畏れ、汗が出るなどの中風症を発生し、小便の回数は多いが量が少なくなる。

2-4本経の気が虚する彑肩背が疼痛し、呼吸が短くなり、小便の色が変って異常になる。

講習会資料より抜粋

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